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仙台家庭裁判所 昭和53年(少)2178号 決定

少年 K・Y子(昭三九・一・二二生)

主文

少年を初等少年院(一般短期)に送致する。

理由

(虞犯事由)

当裁判所の認定した虞犯事由は宮城県中央児童相談所長作成の児童送致書記載の送致を必要と認める事由と同一であるから、それをここに引用する。

(適条)

少年法三条一項三号イ・ロ・ハ・ニ

(処遇理由)

少年は五歳のときから家庭を離れてずつと養護施設において生活していたものであるが、中学三年生時の夏休みに一時帰省したころから急速に素行が乱れ、無断外泊、煙草、シンナー吸引が目立つようになり、服装や髪形も乱れてきた。

養護施設では指導を強めていつたものの、一向に治まらないため、本年一〇月からは児相と協力態勢を組んだが、その後も反抗するばかりで、一時保護所入所後も全く指導に従わなかつたものである。

これまでの経緯をみると、反抗-注意-反抗というパターンを繰り返しながら、それが悪化していつたように思われる。

少年は鑑別所入所後、それまで話していた交友関係はでたらめを言つていたもので、特定の不良交友はなく、性体験等もないと供述しているが、関係者の話を総合すると、少なくとも何らかの不良グループとの結びつきはあると認められ、今後誘われる危険性もあり、注意を要する。しかしながら、少年の場合現時点においてはいわゆるつつぱつた状況にあつて、虞犯性、非行性自体が進んでいるものとは認め難い。

少年の資質面においては、鑑別結果通知書に記載されているようにかなり偏つた性格であつて、感情の起伏が激しく、自己抑制がきかないといつた問題点もある一方、まだ柔軟性、可塑性に富み、躾もなされていて、素直な面を有していることが窺える。

これらの事情に鑑みると、今一度在宅で指導することを考慮してもいい事案であると考えられる。

しかしながら、養護施設に戻ることはこれまでの経緯からみて好ましくはなく、一方家庭の監護力について考察するに、実父は口先では引き取つてもよいとは言つているものの、内心は少年を拒否しており継母との関係もうまくいつていないので期待することはできず、在宅での指導は困難な状況にある。

他方少年は現在中学三年生であり、来年の四月以降は一人立ちが可能となる。

以上の諸事情を総合勘案すれば、やや短かきに失するきらいもあり今後の再犯のおそれを拭い去ることができるかどうか、多少の不安は残るが、来年三月三一日までの間少年院に収容して矯正教育を行なうとともにその後は社会内で一人立ちできる機会を与えることが望ましいのではないかと考えられる。なお少年は現時点においては美容学校に行くことを望んでいる。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 廣澤哲郎)

〔参考一〕 児童送致書記載の送致を必要と認める事由

本児は両親に遺棄され、父方祖母が世話し、その後養育困難となり、五歳四ヶ月より養護施設○○園に措置し、昭和四四年七月二八日両親は協議離婚し親権は父親が持つ。父親は昭和四五年三月一九日再婚したが継母K・S子は縁組みはしていない。園では昭和五二年まで父及び継母の面会もなく、一時帰省も実施しなかつたが、本児から家庭との接触を希望し、昭和五三年より家庭への一時帰省実施して来たが、非行児との接触を深め、夏休みの一時帰省時に非行児の家を泊り歩いたり、無断外泊、煙草、シンナー吸引、異性交遊と行動がエスカレートし、園内でも非行児グループとの関係が断ち切れず、夜中に園をぬけ出し、シンナー吸引、異性交遊もある上、担当職員の指導に従わず、児童相談所での通所指導実施、昭和五三年一〇月二八日無断外泊、一〇月三一日自宅に帰つたのを見つけ園に連れもどしたが、同夜、再び無断外出一一月一日自宅に帰つた所を発見同日一時保護したものである。その後一一月一日から一一月七日まで、五回、一二月二、三日二回の無断外出、喫煙、シンナー吸引が続き保護所内での指導に反抗的態度を取り続け、職員の指導に全くしたがわない。集団生活指導場面では協調性がなく改善の手がかりがつかめない状況である。安定化にむけて努力はしたが、全てに拒否的であり今後の方向づけも出来得ず、初等少年院収容が適当と思料し身柄付にて貴所に送致します。

〔参考二〕 処遇勧告書〈省略〉

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